FreeCAD STLメッシュ精度|偏差・角度偏差の設定と決め方

設計
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FreeCADで3Dモデルを作成し、STL形式で出力するとき、「メッシュの精度はどのくらいに設定すればよいのか」「偏差や角度偏差の数値をどう決めればよいのか」と悩んでいませんか。

STLメッシュの精度は、3Dプリント後の形状再現性に関わる重要な設定です。しかし、数値を小さくすればよいというわけではありません。設定によっては三角形数やファイルサイズが増加し、スライサーの処理負荷が大きくなることもあります。

私は機械設計エンジニアとして、業務で3DCADデータを扱い、3Dプリンタによる造形を行ってきました。

この記事では、その経験をもとに、FreeCADのSTLメッシュ精度を決める偏差と角度偏差の意味から、設定方法、数値の決め方、出力後の確認方法まで解説します。

この記事を読むことで、設定項目の違いや適切な調整方法が分かり、部品の用途や形状に合わせたメッシュを作成できるようになります。

大切なのは、必要な形状再現性を確保しながら、過剰なデータ量を避けることです。目的に合ったメッシュ精度を見極め、FreeCADで狙いどおりの3Dプリントにつなげましょう。

この記事で分かること

  • FreeCADのSTLメッシュ精度を決める偏差と角度偏差の意味
  • 直接エクスポートとメッシュ生成による設定方法の違い
  • 偏差の単位や相対設定の仕組み
  • 出力したSTLの形状・三角形数・ファイルサイズの確認方法
  • 造形目的に合わせた必要十分なメッシュ精度の決め方
  1. STLメッシュ精度とは
    1. STLは曲面を三角形で表現する
      1. CAD形状とSTLの三角形メッシュの違い
    2. メッシュの粗さが曲面の角ばりに現れる
      1. 円筒やフィレットの輪郭が角ばる理由
      2. 画面上の表示とメッシュ形状の違い
  2. 偏差と角度偏差の違い
    1. 偏差は形状の近似誤差を制御する
    2. 角度偏差は面の向きの変化を制御する
    3. 偏差と角度偏差は組み合わせて考える
  3. メッシュ精度による違い
    1. 曲面の再現性と三角形数が変わる
    2. ファイルサイズと処理負荷が変わる
    3. メッシュの細分化による造形精度の限界
  4. 目的に合った設定値の決め方
    1. 機能部品は必要な形状精度から決める
      1. 穴径やはめ合いで考慮すべき誤差
    2. 曲率と許容誤差でメッシュ精度を決める
      1. 曲率と輪郭のずれから分割の細かさを判断する
      2. 外観要求と機能要求で優先順位を変える
    3. 複数のSTLを比較して設定値を選ぶ
      1. 比較条件をそろえて必要十分な設定を選ぶ
  5. STLメッシュ精度の設定方法
    1. 出力方法による設定の違い
      1. 直接エクスポートとメッシュ生成の違い
    2. 偏差と角度偏差を設定して出力する
      1. 設定値を変更してSTLを出力する
    3. 偏差の単位と相対設定を確認する
      1. 単位と相対設定の適用範囲を確認する
  6. 出力したSTLのメッシュを確認する
    1. STLの曲面と三角形の分割を確認する
      1. 曲面の輪郭と三角形の分割状態を見る
    2. スライサーで形状とデータ量を確認する
      1. 形状と読み込み状態を確認する
      2. ファイルサイズと三角形数を確認する
  7. まとめ|必要なメッシュ精度を見極める

STLメッシュ精度とは

FreeCADで作成した円筒やフィレットなどの曲面は、STLに出力すると三角形の集合に変換されます。そのため、メッシュの分割が粗いと、滑らかな曲面が角ばって見えることがあります。

このとき重要なのがSTLメッシュ精度です。

STLメッシュ精度とは、CADで定義した形状を、三角形の集合でどの程度忠実に近似するかを示すものです。三角形の分割状態によって、曲面の再現性やデータ量が変わります。

まずは、CAD形状とSTLの違い、そしてメッシュの粗さが曲面の見た目に影響する仕組みを理解しましょう。

STLは曲面を三角形で表現する

CADとSTLでは、形状の表現方法が異なります。

CADでは円筒や球面などを幾何学的な情報として定義できます。一方、STLでは曲面そのものを保持せず、三角形の平面を組み合わせて表面を近似します。

この違いが、STLメッシュ精度を考えるうえでの基本になります。

CAD形状とSTLの三角形メッシュの違い

FreeCADで一般的なソリッド形状を扱う場合、円筒の側面は円筒面、フィレットは曲面として幾何学的に定義されます。そのため、画面の拡大率を変えても、形状そのものが多角形に変わるわけではありません。

一方、STLは三角形の頂点と面の情報によって表面を表現します。それぞれの三角形は平面なので、曲面を再現するには、小さな三角形を多数つないで近似する必要があります。

両者の違いを整理すると、次のようになります。

比較項目CAD形状STLメッシュ
形状の表現幾何学的な曲面・平面三角形の集合
円筒の表現円筒面として定義三角形で近似
曲面の情報曲面の幾何学的な定義を保持頂点と三角形の面で表現
拡大したとき曲面の定義は変わらない三角形の形状が見える

<図解:CADで定義された円筒面と、三角形で近似されたSTLの円筒面を並べた比較図。CAD側は滑らかな曲面、STL側は複数の三角形で構成された表面を示す。>

STLに変換した時点で、CADが持っていた曲面の幾何学的な情報は、三角形による近似形状に置き換わります。

つまり、STLのメッシュを細かくすることは、CADの曲面をそのまま保持することではなく、三角形による近似を細かくすることです。

メッシュの粗さが曲面の角ばりに現れる

STLの三角形メッシュが粗いと、円筒やフィレットなどの曲面が角ばって見えます。

これは、曲面を近似する三角形が大きくなり、元の曲面からのずれが目立つためです。

円筒やフィレットの輪郭が角ばる理由

例えば、円筒を上から見たときの輪郭を考えてみましょう。

CADでは円として定義されているため、理論上は滑らかな円になります。しかし、STLでは円周を複数の直線で近似します。

分割数が少ない場合、円筒の輪郭は多角形状になり、元の円からのずれが目立ちます。分割数を増やすと、直線の長さが短くなり、円に近い滑らかな輪郭になります。

フィレットも同じです。曲面を構成する三角形が大きいほど、元の曲面からのずれが目立ちやすくなります。

<図解:同じ円筒を粗いメッシュ・中程度のメッシュ・細かいメッシュで比較。上面の輪郭と側面の三角形分割を並べ、分割数が増えるほど円に近づく様子を示す。>

ここで重要なのは、三角形の数だけでなく、一つひとつの三角形の大きさや配置も形状の再現性に関係することです。

メッシュが粗いと曲面の輪郭が角ばり、細かくすると元の曲面に近づきます。ただし、三角形を増やせば無条件に造形品質が向上するわけではありません。

画面上の表示とメッシュ形状の違い

FreeCADの画面上で曲面が滑らかに見えていても、出力されるSTLのメッシュが十分に細かいとは限りません。

これは、CADの画面表示とSTLの形状データが別のものだからです。

FreeCADでは、画面上でCAD形状を表示する際にも、コンピューターの画面に描画するための近似表示が使われます。この表示の滑らかさは、STL出力時のメッシュ精度とは別に扱われます。

また、陰影や表示方法によって、三角形の境界が目立たず、滑らかな曲面に見える場合もあります。

そのため、CAD画面の見た目だけでSTLのメッシュ精度を判断するのは危険です。

STLの形状を確認するときは、実際に出力したSTLを読み込み、三角形の分割状態や輪郭を確認する必要があります。

CAD画面で滑らかに見えることと、STLが滑らかな形状を再現していることは同じではありません。

この違いを理解しておくことが、適切なSTLメッシュ精度を選ぶための第一歩です。

偏差と角度偏差の違い

FreeCADのSTLメッシュ精度は、主に「偏差」と「角度偏差」の2つの設定で調整します。

偏差はCAD形状とメッシュの距離的なずれを制御し、角度偏差は曲面を分割するときの面の向きの変化を制御します。

どちらもメッシュの細かさに関係しますが、判断の基準が異なります。

  • 偏差: 元のCAD形状から、メッシュがどれだけ離れてよいかを制御する
  • 角度偏差: 曲面を分割するとき、面の向きがどれだけ変化してよいかを制御する

この2つの役割を理解すると、形状に応じてメッシュの分割状態を調整しやすくなります。

偏差は形状の近似誤差を制御する

偏差は、CAD形状の表面と、三角形メッシュの表面との間に許容する距離方向のずれを制御する設定です。

例えば、円筒の側面を三角形で近似すると、平面である三角形の表面と、元の曲面との間にわずかな隙間が生じます。このずれをどこまで許容するかが偏差の役割です。

偏差を小さくすると、CAD形状から離れないようにメッシュが細かく分割されます。反対に、偏差を大きくすると、多少のずれを許容するため、分割が粗くなりやすくなります。

<図解:円筒の断面を使い、元の円弧とメッシュを構成する直線の距離を比較。偏差が大きい場合は円弧からのずれが大きく、小さい場合はずれが小さい状態を示す。>

つまり、偏差はメッシュが元のCAD形状をどれだけ正確に追従するかを決める設定です。

ただし、偏差を小さくすれば、すべての曲面が一律に同じ割合で細かくなるわけではありません。実際の分割状態は、曲面の形状や角度偏差など、ほかの条件との組み合わせで決まります。

角度偏差は面の向きの変化を制御する

角度偏差は、曲面を分割するときの面の向きの変化を制御する設定です。

偏差がCAD形状とメッシュの距離に着目するのに対し、角度偏差は、曲面をメッシュに変換するとき、隣り合うメッシュ区間の角度変化をどこまで許容するかを制御する設定です。

角度偏差を小さくすると、曲面の角度変化を細かく捉える必要があるため、分割が細かくなりやすくなります。

反対に、角度偏差を大きくすると、面の向きの変化を大きく許容するため、分割が粗くなりやすくなります。

<図解:円筒の断面を使い、粗い分割と細かい分割を比較。隣り合う面の向きの変化を角度で示し、角度偏差が小さいほど細かく分割される関係を示す。>

角度偏差が重要になるのは、特に曲面のように面の向きが連続的に変化する形状です。円筒やフィレットなどでは、角度偏差を小さくすることで、曲面の分割が細かくなりやすくなります。

つまり、角度偏差は曲面の向きの変化をどの程度細かく表現するかを決める設定です。

偏差と角度偏差は組み合わせて考える

偏差と角度偏差は、それぞれ異なる基準でメッシュの分割に影響します。そのため、片方だけを調整しても、狙ったメッシュになるとは限りません。

例えば、偏差を小さくしても、角度偏差が大きければ、面の向きの変化を大きく許容するため、曲面の分割が十分に細かくならない場合があります。

反対に、角度偏差を小さくしても、偏差による距離方向の誤差の制限が緩ければ、形状の近似誤差を十分に抑えられるとは限りません。

それぞれの設定による影響を整理すると、次のようになります。

設定大きくした場合小さくした場合
偏差形状のずれを大きく許容し、粗くなりやすい形状のずれを小さく抑え、細かくなりやすい
角度偏差面の向きの変化を大きく許容し、粗くなりやすい面の向きの変化を小さく抑え、細かくなりやすい

<図解:偏差と角度偏差の組み合わせによるメッシュ状態の比較。両方が大きい場合、偏差だけ小さい場合、角度偏差だけ小さい場合、両方が小さい場合の4パターンを並べる。>

このように、偏差と角度偏差は別々の役割を持ちながら、最終的なメッシュの分割状態に影響します。

重要なのは、どちらか一方を極端に小さくすることではなく、両方の設定で形状の再現性を確保することです。

具体的な設定値は、部品の用途や曲面の形状、必要な精度によって変わります。次の章では、メッシュを細かくしたときの形状再現性やファイルサイズへの影響を整理します。

メッシュ精度による違い

STLメッシュを細かくすると、CAD形状に近い形状を再現できます。一方で、三角形の数が増えるため、ファイルサイズやスライサーの処理負荷も大きくなります。

ただし、メッシュを細かくしても、3Dプリンターの造形精度が同じように向上するわけではありません。

ここでは、メッシュ精度を変えることで何が変わるのかを、形状再現性・データ量・実際の造形精度の3つの観点から整理します。

曲面の再現性と三角形数が変わる

メッシュを細かくすると、曲面の輪郭が元のCAD形状に近づきます。

例えば、同じ円筒モデルを異なるメッシュ精度でSTL出力した場合、粗いメッシュでは円周が多角形に近い形状になります。細かいメッシュでは三角形の分割数が増え、滑らかな円に近づきます。

<図解:同じ円筒モデルを粗いメッシュ・中程度のメッシュ・細かいメッシュの3段階で比較。円筒の上面輪郭と側面の三角形分割を並べ、三角形数が増えるほど曲面の再現性が高くなる様子を示す。>

この違いは、円筒だけでなく、フィレットや球面などの曲面でも同じです。特に、半径の小さい曲面や複雑な曲面では、メッシュの粗さが輪郭に現れやすくなります。

一方、平面部分はもともと三角形の平面で表現できるため、曲面ほど細分化による形状再現性の変化は目立ちません。

つまり、メッシュ精度を高める効果は、モデル全体で均一ではありません。曲面の多いモデルほど、細分化による影響が大きくなります。

ファイルサイズと処理負荷が変わる

メッシュを細かくすると三角形の数が増えるため、STLのファイルサイズも大きくなります。

STLは三角形ごとに頂点や面の情報を保存する形式です。そのため、三角形数が増えるほど保存するデータ量も増加します。

特に、Binary STLでは三角形1つあたり50バイトの情報を保存します。例えば、三角形が1万個なら約0.5MB、10万個なら約5MBが目安です。これにヘッダーなどの情報が加わります。

三角形数Binary STLの概算サイズ
10,000個約0.5MB
100,000個約5MB
1,000,000個約50MB

※Binary STLの場合。ファイルサイズは三角形数にほぼ比例します。

データ量が増えると、FreeCADでのメッシュ生成やSTLの保存だけでなく、Bambu Studioでの読み込みやスライス処理にも影響します。

特に、細かい曲面が多いモデルや複雑な形状では、三角形数が増えやすくなります。過剰に細分化すると、読み込みや表示、スライスに時間がかかり、編集作業も重くなる可能性があります。

ただし、処理負荷は三角形数だけで決まるわけではありません。モデルの形状やPCの性能、スライサーの処理内容にも左右されます。

重要なのは、必要以上に細かいメッシュを作らないことです。

造形結果に違いが出ないほど細かくしても、ファイルサイズや処理時間が増えるだけになる場合があります。形状再現性を確保しながら、データ量を抑えられる設定を選ぶことが大切です。

メッシュの細分化による造形精度の限界

メッシュを細かくすると、CAD形状とSTLの近似誤差は小さくなります。しかし、実際に造形した部品の寸法精度まで同じように向上するわけではありません。

これは、STLの近似誤差と3Dプリンターによる造形誤差が別の要因で発生するためです。

例えば、直径10mmの円筒を考えてみましょう。

CADでは直径10mmの円筒として設計していても、STLでは三角形による近似が行われます。この段階で、元の円筒とメッシュの間にわずかな形状のずれが生じます。

さらに、3Dプリンターで造形すると、ノズル径や積層ピッチ、材料の収縮などによって、実際の寸法にも誤差が発生します。

<図解:CAD形状10mmを基準に、STLメッシュへの変換で生じる近似誤差と、FDM造形で生じる寸法誤差を別々の段階として示す。CAD形状→STLメッシュ→造形品の順に並べ、それぞれの誤差要因を明示する。>

実際の造形精度に影響する主な要因は次のとおりです。

要因造形精度への影響
ノズル径・線幅細部の形状や穴径、外形の再現性に影響する
積層ピッチZ方向の段差や高さ方向の再現性に影響する
材料の収縮冷却時の収縮によって寸法や形状が変化する
造形条件温度、速度、冷却などによって寸法や形状が変化する
プリンターの機械精度軸の動きや位置決めの誤差が寸法に影響する

例えば、STLの近似誤差を十分に小さくしても、材料の収縮によって穴径が設計値からずれることがあります。また、ノズル径や線幅の影響で、小さな穴や細い溝を設計どおりに再現できない場合もあります。

このような場合、STLのメッシュをさらに細かくしても、問題の根本的な改善にはつながりません。

機械設計では、寸法精度を考えるときに、設計形状だけでなく加工方法や材料の特性も考慮します。FDM方式の3Dプリンターでも同じ考え方が必要です。

STLメッシュ精度は、CAD形状をどこまで忠実にデータ化するかを決めるものであり、造形品の寸法精度を保証するものではありません。

したがって、メッシュ精度はプリンターの造形能力や材料特性を踏まえて決める必要があります。メッシュだけを過剰に細かくするのではなく、設計・データ変換・造形の各段階で発生する誤差を分けて考えることが重要です。

目的に合った設定値の決め方

STLメッシュ精度に一律の正解はありません。部品の用途や形状、必要な寸法精度に応じて、必要十分な精度を選ぶことが重要です。

例えば、外観を重視するカバーと、穴径やはめ合いが重要な機能部品では、メッシュ精度を決める基準が異なります。

設定を細かくしすぎるとデータ量が増えますが、粗すぎると形状の再現性が不足します。

ここでは、機能部品と曲面部品を例に、設計要求からメッシュ精度を判断する方法を説明します。

機能部品は必要な形状精度から決める

穴径やはめ合いが重要な機能部品では、設計上の寸法要求からメッシュ精度を考えます。

例えば、軸を通す穴や、別の部品と組み合わせる位置決め穴では、設計した寸法を適切に再現できることが重要です。

このような部品では、単に曲面を滑らかにするだけでは不十分です。設計上の寸法公差に対して、STLへの変換で生じる形状のずれをどこまで許容できるかを考える必要があります。

穴径やはめ合いで考慮すべき誤差

機能部品の寸法精度を考えるときは、次の3つを区別します。

誤差の種類発生する段階主な内容
寸法公差設計段階設計寸法に対して許容する寸法の範囲
STLの近似誤差データ変換段階CAD形状を三角形メッシュで近似するときの形状のずれ
造形による寸法誤差造形段階プリンターや材料、造形条件によって生じる寸法のずれ

例えば、直径10mmの穴を設計し、許容寸法を10±0.1mmとした場合を考えます。

この場合、造形品の穴径は9.9~10.1mmの範囲に収める必要があります。

ただし、この寸法公差をすべてSTLの近似誤差に使えるわけではありません。実際の造形でも寸法誤差が発生するためです。

そこで、設計公差の一部をSTLの近似誤差に割り当て、残りを造形誤差などに考慮する必要があります。

<図解:設計寸法10mmを基準に、許容寸法範囲を示す。寸法公差の範囲内にSTLの近似誤差と造形誤差の影響を考慮するイメージを示す。>

ここで注意したいのは、STLの偏差はCAD形状とメッシュ表面の距離的なずれであり、穴径そのものの寸法誤差を直接指定するものではないことです。

穴のメッシュ形状によっては、内側にずれる部分と外側にずれる部分が生じます。そのため、偏差の設定値と穴径の変化量を単純に同じものとして扱うことはできません。

実務では、次の順番で考えると整理しやすくなります。

  1. 設計上必要な穴径やはめ合いの公差を確認する。
  2. 造形によって発生する寸法誤差を考慮する。
  3. STLの近似誤差に割り当てられる範囲を決める。
  4. 必要な形状再現性を満たすメッシュ精度を選ぶ。

機能部品では、メッシュの細かさを先に決めるのではなく、必要な寸法精度から逆算することが重要です。

曲率と許容誤差でメッシュ精度を決める

曲面のメッシュ精度は、曲率と許容できる輪郭のずれから考えます。

曲率とは、簡単にいえば曲面の曲がり具合です。半径の小さい曲面ほど曲がりが強く、半径の大きい曲面ほど緩やかになります。

同じメッシュの分割状態でも、曲率によって元の曲面からのずれ方は変わります。

そのため、外観を重視する部品では、曲面の半径と許容できる輪郭のずれを基準に、必要な分割の細かさを判断します。

曲率と輪郭のずれから分割の細かさを判断する

円筒の断面を例に考えてみましょう。

円周を直線で近似すると、直線と元の円弧の間にずれが生じます。このずれは、分割する範囲が広いほど大きくなり、細かく分割するほど小さくなります。

また、同じ分割範囲で比較した場合、半径の小さい円ほど曲がりが強いため、輪郭のずれが大きくなります。

<図解:半径の異なる2つの円弧を同じ分割角度で直線近似した比較図。小さい半径の円弧ほど直線との距離が大きくなることを示す。>

この関係から、次のように判断できます。

  • 半径が小さい曲面:輪郭のずれが大きくなりやすいため、細かい分割が必要。
  • 半径が大きい曲面:輪郭のずれが小さくなりやすいため、比較的粗い分割でも再現しやすい。
  • 許容誤差が小さい曲面:元の形状に近づけるため、細かい分割が必要。
  • 許容誤差が大きい曲面:過剰な細分化を避け、データ量とのバランスを優先できる。

ここでいう許容誤差は、CAD形状に対してSTLの輪郭がどこまでずれてもよいかという基準です。

例えば、外観部品の大きな丸みでは多少の輪郭のずれが目立たない場合があります。一方、細かなフィレットや小径の円筒では、わずかなずれでも形状の違いが目立つことがあります。

ただし、実際の分割状態は偏差だけでなく角度偏差にも影響されます。曲率と許容誤差は、必要なメッシュ精度を考えるための設計上の判断基準として使います。

外観要求と機能要求で優先順位を変える

メッシュ精度を決めるときは、部品の用途によって優先する項目を変えます。

例えば、外観を重視するカバーと、穴径やはめ合いが重要な機能部品では、メッシュ精度に求める役割が異なります。

比較項目外観重視の部品機能重視の部品
主な要求曲面の滑らかさ寸法・形状の再現性
重視する形状曲面、フィレット、外形穴、軸、はめ合い面
判断基準輪郭のずれが目立たないこと寸法要求に対して近似誤差が十分小さいこと
データ量外観に必要な範囲で許容必要な精度を満たす範囲に抑える

外観重視の部品では、見る方向から曲面の角ばりが目立たないことが重要です。特に、光が当たる丸みや広い曲面では、メッシュの粗さが外観に現れやすくなります。

一方、機能重視の部品では、穴やはめ合い面など、組み付けに関係する形状の再現性を優先します。ただし、メッシュを細かくしても造形による寸法誤差は残るため、必要に応じて造形条件や設計寸法も検討する必要があります。

つまり、外観重視では見た目に必要な輪郭の再現性を、機能重視では寸法要求に対する形状の再現性を優先します。

部品の用途によって、どの形状にメッシュ精度を割り当てるかを考えることが重要です。

複数のSTLを比較して設定値を選ぶ

偏差と角度偏差の適切な設定値は、形状や用途によって異なります。そのため、最終的には同じCADモデルから複数のSTLを出力し、比較して判断する方法が有効です。

設定値だけを見て判断するのではなく、実際に生成されたメッシュの形状とデータ量を確認します。

比較条件をそろえて必要十分な設定を選ぶ

複数のSTLを比較するときは、同じCADモデルを使用し、偏差と角度偏差以外の条件をそろえます。

比較する条件が異なると、メッシュの違いが設定値によるものなのか、モデルや出力条件によるものなのか判断できなくなるためです。

比較では、次の項目を確認します。

比較項目確認する内容
曲面の輪郭円筒やフィレットの角ばりが許容範囲内か
三角形数必要以上に細分化されていないか
ファイルサイズ形状再現性に対してデータ量が過剰でないか
形状全体元のCAD形状を適切に再現できているか

<図解:同じCADモデルから異なる偏差・角度偏差で出力した3つのSTLを並べる。各モデルについて曲面の拡大図、三角形数、ファイルサイズを比較できる構成にする。>

比較するときは、まず粗めのメッシュから確認し、輪郭のずれが気になる場合は、より細かいメッシュと比較します。

そのうえで、次のように判断します。

  1. 曲面の輪郭が要求を満たしているか確認する。
  2. 三角形数とファイルサイズを比較する。
  3. さらに細かくしても、形状の違いがほとんど見られない場合は、粗い設定を候補にする。
  4. 必要な形状再現性を満たす中で、データ量を抑えられる設定を選ぶ。

このとき、見た目だけで判断しないことも重要です。表示倍率や陰影によって、メッシュの違いが分かりにくくなる場合があります。比較するSTLは同じ表示条件で確認し、輪郭や三角形の分割状態も確認します。

また、偏差と角度偏差は異なる基準でメッシュに影響するため、片方だけを変更した比較と、両方を変更した比較を分けると、それぞれの影響を把握しやすくなります。

最終的には、必要な形状再現性を満たし、データ量や処理負荷が過剰にならない設定を選びます。

最も細かいメッシュではなく、部品の要求を満たす必要十分なメッシュを選ぶことが、適切な精度設定です。

STLメッシュ精度の設定方法

FreeCADでは、STLメッシュ精度を設定する方法が2つあります。

1つは、CAD形状を直接STLにエクスポートする方法です。もう1つは、先にメッシュを生成し、そのメッシュをSTLとして保存する方法です。

この2つは操作手順だけでなく、設定できる項目も異なります。

直接エクスポートでは、環境設定の「Maximum mesh deviation(最大メッシュ偏差)」を使用します。一方、メッシュを生成する方法では、偏差・角度偏差・相対偏差を個別に設定できます。

ここではFreeCAD 1.1を基準に、それぞれの設定場所と操作方法を説明します。

出力方法による設定の違い

STLを出力するときは、目的に応じて出力方法を選びます。

手軽にSTLを作成したい場合は直接エクスポートが便利です。一方、メッシュの分割状態を細かく調整したい場合や、出力前にメッシュを確認したい場合は、メッシュを生成してからエクスポートする方法が適しています。

直接エクスポートとメッシュ生成の違い

2つの出力方法の違いを整理すると、次のようになります。

比較項目直接エクスポートメッシュ生成後に出力
操作ファイルから直接STL出力メッシュを生成してから保存
設定場所環境設定メッシュ生成時のタスクパネル
偏差最大メッシュ偏差Surface deviation
角度偏差個別設定なしAngular deviation
相対偏差個別設定なしRelative surface deviation
メッシュの事前確認出力後に確認生成直後に確認可能

直接エクスポートの操作

直接エクスポートでは、環境設定で最大メッシュ偏差を指定します。

設定手順は次のとおりです。

  1. Meshワークベンチを一度読み込みます。
  2. メニューバーから「編集」→「設定」を開きます。
  3. 左側の一覧から「インポート・エクスポート」→「Mesh Formats」を選択します。
  4. 「Maximum mesh deviation(最大メッシュ偏差)」の値を変更します。
  5. 「適用」または「OK」で設定を確定します。
  6. モデルツリーでSTLに出力するCAD形状を選択します。
  7. 「ファイル」→「エクスポート」を選択します。
  8. ファイル形式から「STL Mesh(*.stl *.ast)」を選び、保存します。

<図解:FreeCADの設定画面。インポート・エクスポート→Mesh Formatsを開き、Maximum mesh deviationの設定箇所を示す。>

この方法では、環境設定の最大メッシュ偏差を使って、CAD形状からSTLメッシュを生成します。

なお、角度偏差や相対偏差を個別に調整することはできません。

メッシュ生成後にエクスポートする方法

こちらは、CAD形状からメッシュを生成する段階で、各種条件を指定する方法です。

操作手順は次のとおりです。

  1. Meshワークベンチに切り替えます。
  2. モデルツリーでメッシュ化するCAD形状を選択します。
  3. 「Meshes」→「Mesh From Shape」を実行します。
  4. メッシュ生成のタスクパネルで使用するメッシャーを選択します。
  5. Standard mesherを選択し、偏差・角度偏差などを設定します。
  6. 「OK」を押してメッシュを生成します。
  7. モデルツリーに追加されたメッシュオブジェクトを右クリックします。
  8. 「Export Mesh」を選択し、STL形式で保存します。

<図解:FreeCADのMesh From Shapeタスクパネル。Standard mesherのSurface deviation、Angular deviation、Relative surface deviationの設定箇所を示す。>

この方法では、CAD形状から生成したメッシュがFreeCAD内に独立したオブジェクトとして残ります。そのため、STLに保存する前に三角形の分割状態を確認できます。

また、複数のCAD形状をメッシュ化したり、生成したメッシュを結合したりすることもできます。

設定項目を細かく調整したい場合は、メッシュ生成後にエクスポートする方法がおすすめです。

偏差と角度偏差を設定して出力する

偏差と角度偏差を個別に設定する場合は、Meshワークベンチの「Mesh From Shape」を使用します。

この方法では、CAD形状をメッシュに変換する段階で、形状の近似誤差と面の向きの変化を調整できます。

設定値を変更してSTLを出力する

ここでは、Standard mesherを使用してSTLを出力する手順を説明します。

1. メッシュ生成画面を開く

まず、FreeCADで対象のCADモデルを開きます。

モデルツリーからSTLに出力したいBodyや形状を選択し、Meshワークベンチに切り替えます。

次に、メニューバーから「Meshes」→「Mesh From Shape」を選択します。

メッシュ生成のタスクパネルが開きます。

2. Standard mesherを選択する

タスクパネルにあるメッシャーの一覧から「Standard mesher」を選択します。

Standard mesherでは、次の項目を設定できます。

設定項目内容
Surface deviationCAD形状とメッシュの距離的なずれを制御
Angular deviationメッシュの面の向きの変化を制御
Relative surface deviation偏差をメッシュの辺の長さに応じて相対的に設定

<図解:Standard mesherの設定画面を拡大し、3つの設定項目を番号付きで示す。>

3. 偏差と角度偏差を入力する

「Surface deviation」に偏差の値を入力します。

次に「Angular deviation」に角度偏差の値を入力します。

偏差を小さくすると、CAD形状からのずれを抑えるため、メッシュが細かくなりやすくなります。

角度偏差を小さくすると、面の向きの変化を細かく表現するため、曲面の分割が細かくなりやすくなります。

必要に応じて「Relative surface deviation」のチェック状態も確認します。相対設定については、後のH3で詳しく説明します。

4. メッシュを生成する

設定が完了したら「OK」を押します。

CAD形状からメッシュが生成され、モデルツリーにメッシュオブジェクトが追加されます。

生成されたメッシュを選択し、画面上で三角形の分割状態を確認します。

5. STL形式で保存する

メッシュの状態を確認したら、モデルツリーのメッシュオブジェクトを右クリックします。

コンテキストメニューから「Export Mesh」を選択し、保存画面を開きます。

ファイル形式にSTLを指定し、保存先とファイル名を設定して保存します。

これで、指定した偏差と角度偏差によって生成したメッシュをSTLとして出力できます。

なお、CAD形状を修正しても、すでに生成したメッシュが自動的に同じ形状へ更新されるわけではありません。CAD形状を変更した場合は、メッシュを再生成してからSTLを出力してください。

偏差の単位と相対設定を確認する

偏差を設定するときは、数値だけでなく単位と相対設定の有無も確認する必要があります。

特に、直接エクスポートとメッシュ生成では設定項目が異なるため、同じ数値を入力しても同じ条件になるとは限りません。

単位と相対設定の適用範囲を確認する

偏差の単位

Standard mesherの「Surface deviation」は、CAD形状とメッシュの間に許容する距離的なずれを指定します。

FreeCADの一般的な機械設計モデルでは、長さの単位としてmmを使用するため、偏差もmmを基準に考えます。

例えば、Surface deviationに0.1を入力した場合は、0.1mmを基準とした偏差設定になります。

一方、「Angular deviation」は角度を指定する項目です。長さではなく、度(°)を基準に設定します。

設定項目単位意味
Surface deviationmmCAD形状とメッシュの距離的なずれ
Angular deviation°メッシュの面の向きの変化

なお、STL形式自体には単位情報がありません。FreeCADではSTL出力時にモデルの寸法をmmとして扱うため、他の単位系でモデルを作成している場合は、出力後の寸法にも注意が必要です。

相対設定とは

「Relative surface deviation」は、偏差を一定の距離ではなく、メッシュの辺の長さに応じて相対的に扱う設定です。

チェックを外した場合は、入力したSurface deviationを絶対的な距離として扱います。

一方、チェックを入れると、指定した偏差に現在のメッシュ辺の長さを掛けた値が、線形偏差の基準になります。

例えば、Surface deviationを0.1に設定した場合を考えます。

  • 相対設定なし:辺の長さに関係なく、0.1mmを基準にする。
  • 相対設定あり:メッシュ辺の長さに応じて、許容する偏差が変化する。

つまり、相対設定を有効にすると、メッシュの大きさに応じて偏差の基準も変わります。

<図解:絶対偏差と相対偏差の比較図。絶対偏差では異なる長さの辺に対して同じ距離を示し、相対偏差では辺の長さに応じて許容偏差が変わる様子を示す。>

機械設計の部品では、寸法に対する許容誤差を考えやすい絶対偏差が扱いやすい場合があります。一方、形状の大きさに応じて近似精度を変えたい場合は、相対偏差も選択肢になります。

出力方法による設定値の違いに注意する

ここまで説明したように、直接エクスポートとメッシュ生成では、偏差の設定方法が異なります。

直接エクスポートの「Maximum mesh deviation」は、メッシュ生成後の「Surface deviation」と関連する設定ですが、角度偏差や相対設定を個別に指定できるわけではありません。

また、Mesh From Shapeで生成済みのメッシュを「Export Mesh」で保存する場合、STL保存時に新たな偏差を指定するのではなく、すでに生成されているメッシュ形状がそのまま保存されます。

そのため、設定値を比較するときは、次の点に注意してください。

  • 直接エクスポートでは、環境設定の最大メッシュ偏差を確認する。
  • メッシュ生成では、Standard mesherの3つの設定項目を確認する。
  • 相対偏差の有無をそろえて比較する。
  • 異なる出力方法の数値を、そのまま同じ精度として比較しない。

メッシュ精度を細かく管理したい場合は、Standard mesherで偏差・角度偏差・相対設定を明示してメッシュを生成する方法が適しています。

出力したSTLのメッシュを確認する

STLを出力したら、実際のメッシュがCAD形状を適切に再現しているか確認します。

偏差や角度偏差を設定していても、設定値だけで出力結果の良否は判断できません。実際に生成された三角形メッシュを確認することが重要です。

確認するポイントは次の3つです。

  • 曲面の輪郭と三角形の分割状態
  • Bambu Studioでの読み込み状態と形状の欠損
  • ファイルサイズと三角形数

FreeCADではメッシュそのものを確認し、Bambu Studioではスライサーで正常に扱える形状になっているかを確認します。

STLの曲面と三角形の分割を確認する

まずはFreeCADで、出力したSTLのメッシュ形状を確認します。

特に、円筒やフィレットなどの曲面は、三角形の分割状態によって輪郭の滑らかさが変わります。

STLを読み込んだだけでは、CAD形状との違いが分かりにくい場合があります。三角形の輪郭を表示して、元のCAD形状と比較すると判断しやすくなります。

曲面の輪郭と三角形の分割状態を見る

FreeCADでは、出力したSTLを読み込み、三角形の分割状態を表示できます。

確認手順は次のとおりです。

  1. ファイル→インポートからSTLファイルを読み込みます。
  2. モデルツリーから読み込んだメッシュオブジェクトを選択します。
  3. プロパティの「View」タブを開きます。
  4. 「Display Mode」を「Flat Lines」に変更します。
  5. 3Dビューで三角形の分割状態を確認します。

<図解:FreeCADで同じ円筒形状を表示した比較図。左は通常の表示、右はFlat Linesで三角形の分割を表示した状態。>

Flat Linesにすると、メッシュを構成する三角形の輪郭が表示されます。

ここでは、次の点を確認します。

  • 円筒の輪郭:円周が多角形状になっていないか。
  • フィレットの輪郭:曲面の途中で不自然な角ばりが発生していないか。
  • 三角形の分割:曲面部分が極端に粗い分割になっていないか。
  • 形状全体:元のCAD形状と比較して、輪郭に目立つ違いがないか。

さらに正確に確認したい場合は、元のCAD形状とメッシュを同じ位置に重ねて表示します。

CAD形状を表示したままメッシュをFlat Linesにすると、曲面の輪郭と三角形の分割を比較できます。

<図解:元のCAD形状とSTLメッシュを重ねた比較図。円筒とフィレット部分を拡大し、CAD形状からメッシュがずれている様子を示す。>

このとき、三角形が細かく分割されていることだけを良しと判断しないようにします。

重要なのは、元のCAD形状に対して必要な輪郭の再現性が確保されていることです。

また、FreeCADの通常表示では、陰影や表示品質によって曲面が滑らかに見える場合があります。実際の三角形分割を確認するには、Flat Linesで表示することが有効です。

STLの品質は、画面上の見た目だけでなく、三角形の分割状態と元のCAD形状との違いから判断します。

スライサーで形状とデータ量を確認する

FreeCADでメッシュを確認したら、次はBambu StudioにSTLを読み込みます。

ここでは、STLがスライサーで正常に読み込めるか、形状に欠損や不自然な部分がないかを確認します。

FreeCADで正常に表示できても、スライサーで正常に扱えるとは限りません。最終的に造形データを作成するBambu Studioでも確認することが重要です。

形状と読み込み状態を確認する

Bambu StudioでSTLを読み込み、モデル全体と細部の形状を確認します。

確認手順は次のとおりです。

  1. Bambu Studioを起動します。
  2. 「Prepare」画面を開きます。
  3. STLファイルをドラッグ&ドロップするか、「ファイル」からインポートします。
  4. 読み込まれたモデルの形状を確認します。
  5. 必要に応じてモデルを拡大し、細部を確認します。

<図解:Bambu StudioのPrepare画面にSTLを読み込んだ状態。モデル全体と円筒・フィレット部分の拡大位置を示す。>

確認するポイントは次のとおりです。

  • 形状の欠落:CADで設計した穴や突起、壁などが欠けていないか。
  • 曲面の状態:円筒やフィレットに不自然な角ばりがないか。
  • 形状の異常:意図しない隙間や面の乱れが発生していないか。
  • 読み込み状態:モデルが正常に配置され、スライスできる状態になっているか。

また、STLの読み込み時にエラーやメッシュに関する警告が表示された場合は、その内容を確認します。

特に、穴や隙間などによってメッシュが閉じていない場合、スライサーで内部と外部を正しく判定できず、意図しないスライス結果になることがあります。

形状に異常が見つかった場合は、すぐに修復を実行するのではなく、まずFreeCAD側の元形状とSTLを確認します。自動修復によって意図した形状が変わる可能性もあるためです。

なお、Bambu Studioの通常表示は陰影処理されているため、三角形の分割状態を正確に判断するには適していません。

最後に、実際に「Slice Plate」を実行し、プレビューで意図しない欠損や形状の変化がないか確認します。

Bambu Studioでは、STLが正常に読み込めることだけでなく、スライス後も意図した形状が再現されていることを確認します。

ファイルサイズと三角形数を確認する

最後に、STLのファイルサイズと三角形数を確認します。

偏差や角度偏差を小さくすると、一般的に三角形数が増加します。それに伴い、STLのファイルサイズも大きくなります。

そのため、形状の再現性だけでなく、データ量が過剰になっていないかも確認します。

ファイルサイズの確認

STLのファイルサイズは、Windowsのエクスプローラーなどで確認できます。

  1. 出力したSTLファイルを保存したフォルダを開きます。
  2. STLファイルを右クリックします。
  3. 「プロパティ」を選択します。
  4. 「サイズ」を確認します。

ファイルサイズが大きい場合は、三角形数が多くなっている可能性があります。

ただし、ファイルサイズは保存形式やデータ構造にも影響されます。ファイルサイズだけでメッシュの細かさを判断しないようにします。

三角形数の確認

三角形数は、メッシュを構成する面の数です。

FreeCADで読み込んだメッシュオブジェクトについて、Pythonコンソールを利用すれば確認できます。

対象のメッシュオブジェクトを選択した状態で、Pythonコンソールに次のコードを入力します。

Gui.Selection.getSelection()[0].Mesh.CountFacets

実行すると、選択したメッシュの三角形数が表示されます。

<図解:FreeCADのPythonコンソールで三角形数を取得した画面。コードと実行結果を示す。>

三角形数を確認するときは、次の点に注目します。

  • 三角形数が極端に多くなっていないか。
  • 曲面の再現性に対して、過剰な分割になっていないか。
  • ファイルサイズと三角形数の増加が見合っているか。

例えば、三角形数が増えても、曲面の輪郭に目立った違いがなければ、必要以上に細分化されている可能性があります。

一方、ファイルサイズが小さくても、曲面の角ばりが目立つ場合は、メッシュの分割が不足している可能性があります。

ここで重要なのは、ファイルサイズや三角形数に一律の適正値はないということです。

部品の形状や用途によって必要なメッシュ精度は異なります。曲面の再現性が確保されており、データ量も過剰でなければ、必要十分なメッシュとして判断できます。

なお、Bambu Studioの通常画面では、STLの三角形数を直接確認する機能が常に表示されているわけではありません。三角形数はFreeCADなどで確認し、Bambu Studioでは読み込み状態とスライス結果を確認する、という使い分けがおすすめです。

最終的には、曲面の再現性・三角形数・ファイルサイズの3つを合わせて、出力したSTLが適切か判断します。

まとめ|必要なメッシュ精度を見極める

FreeCADのSTLメッシュ精度は、偏差と角度偏差の2つを組み合わせて調整します。

  • 偏差: CAD形状とメッシュの距離方向のずれを制御する。
  • 角度偏差: メッシュの面の向きの変化を制御する。

2つの設定値を小さくすると、一般的に三角形の分割が細かくなり、曲面の再現性が高まります。一方で、三角形数やファイルサイズが増加し、スライサーの処理負荷も大きくなります。

重要なのは、メッシュを必要以上に細かくすることではありません。

機能部品では穴径やはめ合いなどの形状要求を重視し、外観部品では曲面の滑らかさを重視します。また、STLの近似精度と3Dプリンターによる造形精度は別物です。メッシュ精度を高めても、造形後の寸法精度が必ず向上するわけではありません。

設定した条件でSTLを出力したら、FreeCADで三角形の分割状態や元のCAD形状との違いを確認し、Bambu Studioで読み込みやスライス結果に問題がないかも確かめます。

部品の用途と許容誤差から必要な形状再現性を決め、それを満たす範囲でデータ量を抑えることが、適切なメッシュ精度の選び方です。

メッシュを細かくすること自体を目的にせず、設計意図を適切に造形データへ反映できているかを判断しましょう。

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