アセンブリの部品をねじで固定したいけど、ねじのモデリングを省きたい!規格品のねじを使いたい!ねじに特化したワークベンチがあるなら、その使い方を教えて!と思っていませんか?
これらの内容はFastenersワークベンチを使うことで解決できます。
そこでこの記事は、Fastenersワークベンチの使い方について、筆者が自分の力で調べて操作できるようになったことを整理したので、参考にしてください。
この記事でわかること。
- ファスナーの組み方
- ISO規格に対応したJIS規格のファスナー
- パラメータの変更の仕方
- ファスナーの移動と取外し
ファスナーの組み方を習得したい方は、是非ともこの記事を読んであなたの「ものづくり」に役立ててください。
Fastenersワークベンチとは
Fastener(ファスナー)とは、ねじやナット、座金などの締結用部品のことをいいます。
Fastenersワークベンチには、いくつかの規格に対応した締結用部品が3Dデータとして登録されているので、指定した位置に組付けたり、組付けた締結用部品のパラメータ変更や取外しもできます。
ワークベンチの追加
Fastenersワークベンチは、FreeCADの標準ワークベンチに含まれていないため、アドオンマネージャーで追加しておく必要があります。
執筆時のバージョン情報は「v0.4.56」です。
ワークベンチの追加の仕方がよくわからない!という方は、ワークベンチの追加の仕方をこちらの記事にまとめているので参考にしてください。
ファスナーの流れ
下記の手順でファスナーを組付けします。
- アセンブリの用意
- ファスナーの組付け
- ファスナーのパラメータを変更する
アセンブリの用意
ファスナーを組付けしたいアセンブリを開いたら、ワークベンチをFastenersに切替えます。
ファスナーの組付け
ファスナーは立体形状の丸穴のエッジを選択してから、ファスナーアイコンをクリックすると、選択したエッジに一致させて組付けできます。
このファスナーは選択した丸穴の大きさに対して、規格の範囲でサイズを自動調整してくれるので、締結物の「タップ穴」か、被締結物の「通し穴」のどちらかを事前に選択することによって、組付け後のパラメータ変更の手間を少なくできます。
なお、締結物の下穴はタップ穴に含まれます。
「タップ穴」か「通し穴」の選択
ファスナーを選択する前に、これから選択する丸穴のエッジを「タップ穴」か「通し穴」のどちらかに決めておきます。(皿ねじには使用されません)
- タップ穴とは、下穴にめねじを形成したねじ穴のことです。
- 通し穴とは、おねじのねじ山部に対する隙間穴のことです。
- タップ穴にしたいときは「Match for tap hole(タップ穴に合わせる)」アイコンをクリックします。
- 通し穴にしたいときは「Match for pass hole(通し穴に合わせる)」アイコンをクリックします。
おすすめは「被締結物の穴が長穴の場合はタップ穴を選択して、丸穴の場合は通し穴を選択」です。
ファスナーを選択
前の手順で「タップ穴」を選択した場合は、締結物の丸穴のエッジを選択し、「通し穴」を選択した場合は、被締結物の丸穴のエッジを選択します。
次に組付けに使うファスナーのアイコンをクリックすると、選択した丸穴のエッジの大きさに対応したファスナーが組付けされます。
ここでは「十字穴付き小ねじ」の中からISO 7045を選択しました。
小ねじとは、ねじ頭部の外径が比較的小さなおねじのことです。様々な場所に使われています。
その他の組付け方は下記のとおりです。
- 丸穴のエッジを複数選択 → 選択した丸穴にファスナーが組付く
- 丸穴のエッジを含む面を選択 → 面のすべての丸穴にファスナーが組付く
- 丸穴のエッジや面を選択しない → 原点にファスナーが組付く
(皿ねじの場合は、面取り穴の上端を選択する必要があります)
タップ穴と通し穴の大きさに対するファスナーのサイズ比較
ファスナーは選択した丸穴の大きさに対して、規格の範囲でサイズを自動調整してくれるので、タップ穴と通し穴の大きさに対するファスナーのサイズを比較してみました。
対象はISO 7045のねじです。(皿ねじはねじ頭の直径に一致し、それ以外のファスナーはねじ山の外径に一致します)
タップ穴の範囲 | Φ2.3~Φ2.6 | Φ2.7~Φ3.0 | Φ3.1~Φ3.7 | Φ3.8~Φ4.6 |
通し穴の範囲 | Φ3.0~Φ3.4 | Φ3.5~Φ3.9 | Φ4.0~Φ4.9 | Φ5.0~Φ5.9 |
組付くねじ | M3 | M3.5 | M4 | M5 |
登録されているファスナーの規格
登録されているファスナーは、メートルでサイズを表すものと、インチでサイズを表すものに分類され、アイコンの色で区別しています。
- メートルは橙色のアイコンで表し、「DIN、ISO、EN、GOST」の規格品がある
- インチは緑色のアイコンで表し、「ASME、SAE」の規格品がある
- DIN ドイツ工業規格
- ISO(International Organization for Standardization)国際標準化機構
- EN 欧州規格
- GOST ロシア規格
- ASME アメリカ機械学会
- SAE 自動車技術者協会
この中に「JIS」の名称はありませんが、JIS規格は国際性を高めるため、ISO規格への統合が進められています。
よって、ISO規格のファスナーを使用します。
ISO規格に対応したJIS規格のファスナー
登録されているISO規格のうち、JIS規格が対応しているファスナーを下記にまとめました。
六角穴付きボルト(Hexagon socket screws)
英語表記/日本語表記
- ISO 4762 Hexagon socket head cap screws
ISO 4762 六角穴付きボルト - ISO 7379 Hexagon socket head shoulder screws
ISO 7379 六角穴付きショルダボルト - ISO 4026 Hexagon socket set screws with flat point
ISO 4026 平先六角穴付き止めねじ - ISO 4027 Hexagon socket set screws with cone point
ISO 4027 とがり先六角穴付き止めねじ - ISO 4028 Hexagon socket set screws with dog point
ISO 4028 棒先六角穴付き止めねじ - ISO 4029 Hexagon socket set screws with cup point
ISO 4029 くぼみ先六角穴付き止めねじ
対応JIS規格
- JIS B 1176 六角穴付きボルト(Hexagon socket head cap screws)
- JIS B 1175 六角穴付きショルダボルト(Hexagon socket head shoulder screws)
- JIS B 1177 六角穴付き止めねじ(Hexagon socket set screws)
ヘクサロビュラ穴付き小ねじ(Hexalobular socket head screws)
英語表記/日本語表記
- ISO 14579 Hexalobular socket head cap screws
ISO 14579 6角穴付き頭押えねじ - ISO 14580 Hexalobular socket cheese head screws
ISO 14580 6角穴付きチーズ頭ねじ - ISO 14582 Fasteners — Hexalobular socket countersunk head screws, high head
ISO 14582 締結用部品―ヘクサノビュラソケット皿頭ねじ,高頭 - ISO 14583 Hexalobular socket pan head screws
ISO 14583 6角穴付き鍋頭ねじ - ISO 14584 Hexalobular socket raised countersunk head screws
ISO 14584 6角穴付き丸皿頭ねじ
対応JIS規格
- JIS B 1136 ヘクサロビュラ穴付きボルト(Hexalobular socket head cap screws)
- JIS B 1107 ヘクサロビュラ穴付き小ねじ(Hexalobular socket head screws)
すりわり付き小ねじ(Slotted head screws)
英語表記/日本語表記
- ISO 2009 Slotted countersunk flat head screws — Product grade A
ISO 2009 すりわり付き皿小ねじ-部品等級A - ISO 2010 Slotted raised countersunk head screws — Product grade A
ISO 2010 すりわり付き丸皿小ねじ-部品等級A - ISO 1580 Slotted pan head screws — Product grade A
ISO 1580 すりわり付きなべ小ねじ-部品等級A - ISO 1207 Slotted cheese head screws — Product grade A
ISO 1207 すりわり付きチーズヘッド小ねじ-製品等級A
対応JIS規格
- JIS B 1101 すりわり付き小ねじ(Slotted head screws)
すりわりとは、ねじをマイナスドライバーで回すための「ねじ頭部の溝」のことです。
十字穴付き小ねじ(Cross recessed head screws)
英語表記/日本語表記
- ISO 7045 Pan head screws with type H or type Z cross recess — Product grade A
ISO 7045 H形又はZ形十字穴付きなべねじ-部品等級A - ISO 7046 Countersunk flat head screws (common head style) with type H or type Z cross recess — Product grade A
ISO 7046 H形又はZ形十字穴付き皿小ねじ(並頭スタイル)-部品等級A - ISO 7047 Raised countersunk head screws (common head style) with type H or type Z cross recess — Product grade A
ISO 7047 H形又はZ形十字穴付き丸皿小ねじ(並頭スタイル)-部品等級A - ISO 7048 Cross-recessed cheese head screws
ISO 7048 十字穴付きチーズ小ねじ
対応JIS規格
- JIS B 1111 十字穴付き小ねじ(Cross recessed head screws)
ナット(Nuts)
英語表記/日本語表記
- ISO 4032 Hexagon regular nuts (style 1) — Product grades A and B
ISO 4032 六角並ナット(スタイル1)-部品等級A及びB - ISO 4033 Hexagon high nuts (style 2) — Product grades A and B
ISO 4033 六角高ナット(スタイル2)-部品等級A及びB - ISO 4035 Hexagon thin nuts chamfered (style 0) — Product grades A and B
ISO 4035 六角薄ナット(スタイル0)-部品等級A及びB(面取り付き)
対応JIS規格
- JIS B 1181 六角ナット(Hexagon nuts and hexagon thin nuts)
座金(Washers)
英語表記/日本語表記
- ISO 7089 Plain washers — Normal series — Product grade A
ISO 7089 平座金-並形シリーズ-部品等級A - ISO 7090 Plain washers, chamfered — Normal series — Product grade A
ISO 7090 平座金,面取り付き-並形シリーズ-部品等級A - ISO 7092 Plain washers — Small series — Product grade A
ISO 7092 平座金-小形シリーズ-部品等級A - ISO 7093-1 Plain washers — Large series — Part 1: Product grade A
ISO 7093-1 平座金-大形シリーズ-第1部:部品等級A - ISO 7094 Plain washers — Extra large series — Product grade C
ISO 7094 平座金-特大形シリーズ-部品等級C
対応JIS規格
- JIS B 1256 平座金(Plain washers)
ファスナーのパラメータを変更する
コンボビューのツリーに追加されたファスナーをクリックして、プロパティを表示させます。
ファスナーのパラメータを変更できる内容は下記のとおりです。
- diameter 呼び径(M3やM4などのMはメートルねじ、数字はねじ山の外径を表す)
- invert 接続したファスナーの向きを反転(※1)
- left Handed 左ねじ(反時計回りに回すと締まるねじ)
- length 首下長さ(ねじの座面から先端までの長さ)
- length Custom 首下長さのカスタマイズ(※2)
- match Outer 穴に収まる呼び径に変わる
- offset ファスナーの接続面にスペースを空ける(※1)
- thread ねじ山の表示(※3)
- type 同じタイプ(ねじ同士あるいは、ナット同士など)の異なる規格品に変更
※1…丸穴のエッジに接続されていない場合は切替えに反応しません。
※2…必要な長さに変更できますが、基本的に規格品の使用をおすすめします。
※3…処理に時間が掛かるようになるのでfalseをおすすめします。
ここでは「M4×5-Screw」を選択して、ねじ頭の干渉回避と、首下長さを長くしました。
ファスナーの移動と取外し
移動させたいファスナーと移動先の丸穴のエッジを選択して「Move fastener(ファスナーの移動)」をクリックすると、ファスナーを移動できます。
ファスナーを取外す場合は、コンボビューのファスナーをクリックしてDeleteキーをクリックします。
呼び径から下穴径の推奨値を表示する
使用するねじの下穴径を知りたい場合「Screw calculator(ねじ計算機)」をクリックすると、計算機が表示されます。
「Fastener type」と「Screw Diameter(呼び径)」を選択すると、「Suggested Hole diameter(mm)(推奨穴径)」に下穴径の推奨値が表示されます。
M3、M3.5、M4、M4.5、M5の結果は下記のとおりです。
ファスナーを習得したら
ファスナーを習得したら、下記のリンクから学びたい内容の記事に進んでください。
おすすめは「アニメーション」「組立図」です。