Part Designワークベンチで板金部品をモデリングしたけど、メーカーから展開形状が作れないと指摘された!板金部品のモデリングを完了する前に、自分で展開して隣接する形状の隙間を確認したい!板金用のコマンドの使い方を知りたい!など、これらに当てはまっていませんか?
曲げ形状の展開は、Sheet Metalワークベンチのコマンドでモデリングすればできるようになります。
そこでこの記事は、Sheet Metalワークベンチの使い方について、筆者が自分の力で調べてできるようになったことを整理したので、参考にしてください。
この記事でわかること。
- 板金モデルの作り方
- 板金モデルの展開の仕方
Sheet Metalワークベンチの使い方を習得したい方は、是非ともこの記事を読んであなたの「ものづくり」に役立ててください。
シートメタルとは
板金(シートメタル)部品は基本的に一枚の金属板から外形を打ち抜いて、曲げ形状を作っていくため、CADでモデリングできても、展開状態で隣接する形状が重なってしまうと製作できません。
そのため、事前に隣接する形状の重なりが無いことと、金型で打ち抜く場合、金型の強度を確保するための隙間を、展開状態で確認しておく必要があります。
そこで活用したいのが、板金部品のモデリングに特化したSheet Metalワークベンチです。
モデリングするだけならPart Designワークベンチでも作れますが、Sheet Metalワークベンチには、モデルの曲げ形状を展開する機能があります。
ワークベンチの追加
Sheet Metalのワークベンチは、FreeCADの標準ワークベンチに含まれていないため、アドオンマネージャーでSheet Metalのワークベンチを追加しておく必要があります。
ワークベンチの追加の仕方がよくわからない!という方は、ワークベンチの追加の仕方をこちらの記事にまとめているので参考にしてください。
執筆時のSheet Metalワークベンチのバージョン情報は、「v0.3.14」です。
板金モデリングの流れ
下記の手順で板金モデリングをします。
- スケッチの作成
- スケッチから板金モデルを作成
- 板金モデルのエッジにフランジを作成
- 板金モデルの追加工
- 板金モデルの展開
スケッチの作成
板金モデルを作るためには、初めにスケッチを作成する必要があります。
さらに、穴加工や絞り加工を行う場合、Part Designワークベンチのコマンドを使用することになるため、スケッチはPart Designワークベンチから作成します。
スケッチを作成したら、ワークベンチをSheet Metalに切替えます。
スケッチの作り方がよくわからない!という方は、スケッチの作り方をこちらの記事にまとめているので参考にしてください。
スケッチから板金モデルを作成
コンボビューの「Sketch」あるいは、3Dビューのスケッチ線を選択してから、ツールバーの「Make Base Wall」アイコンをクリックします。
すると、コンボビューの中に「BaseBend」が追加され、3Dビューにはスケッチを押し出した板厚1mmの板金モデルが作成されます。
この板厚はデフォルトの値のため、変更したい場合は、「BaseBend」をクリックして、プロパティに表示された「thickness」(板厚)に必要な値を入力します。
フランジの曲げRをBaseBendにリンクする
この後に解説するフランジの曲げRの値は「BaseBend」の「radius」(内側の曲げR)の値にリンクすることもできます。
まず、設定ウィンドウの「Sheet Metal」から「Auto Link Bend Radius」の値を「Disable」(無効にする)から「Enable」(有効にする)に変更します。
この状態で作成したベンドのみ、「BaseBend」の「radius」の値にリンクできます。
ここでは「Disable」のまま進めていきます。
板金モデルのエッジにフランジを作成
板金モデルの手前側のエッジを選択してから、ツールバーの「Make Wall」アイコンをクリックします。
すると、コンボビューの中に「Bend」が追加され、3Dビューには長さ10mmのフランジが奥側に向かって作成されます。
このフランジの長さはデフォルトの値のため、変更したい場合は、「Bend」をクリックして、プロパティに表示された「length」(フランジ長さ)に必要な値を入力します。
なお、奥側のエッジを選択すると、フランジは手前側に向かって作成されます。
複数のエッジにフランジを作成
板金モデルの外周すべてに同じ長さのフランジを作成したい場合、外周すべてのエッジを選択すれば、一度にフランジを作ることができます。
ここでは、すでに1つのフランジを作成済みのため、コンボビューの「Bend」を編集して、すべてのエッジにフランジを作成していきます。
まず、コンボビューの「Bend」をダブルクリックすると、コンボビューに「Binded faces/edges list」が表示されます。
板金モデルの手前側のエッジをすべて選択して、「Update」をクリックすると、選択したエッジが追加されるので「ok」をクリックします。
フランジが作成された板金モデルの角部を拡大すると、細かい切り欠き形状が作成されているので修正していきます。
「Bend」をクリックして、プロパティに表示された「Auto Miter」(角の継ぎ目)の値を「true」から「false」に変更します。
「radius」(内側の曲げR)の値も「1.00」から「0.20」に変更します。
radiusの値に「0」を入力すると一括展開できなくなるので注意してください。
フランジの曲げ位置を変更
フランジの曲げ位置は、フランジを作るために選択したエッジを基準として、外側あるいは、内側にパラメータで変更できます。
解説のため本編から逸れますが、プロパティに表示された「Bend Type」(曲げ位置)の値は、下記のいずれかを選択します。
- Material Outside(内側の曲げRとフランジを基準位置から外側へ作成します)
- Material Inside(内側の曲げRとフランジを基準位置から内側へ作成します)
- Thickness Outside(フランジのみを基準位置から外側へ作成します)
- Offset(Material Outsideの位置からオフセットで指定した距離だけ伸ばします)
本編に戻り、フランジを重ねて、スポット溶接するための形状を作成していきます。
「Bend」で作成したフランジの外側のエッジを選択して、フランジを作成します。
すると、フランジが元の形状に干渉するため、作成したBend001のプロパティの値を変更していきます。
- Bend Typeを「Material Outside」から「Offset」に変更
- gap2(曲げとの隙間)を「0」から「2」に変更
- radiusを「1」から「0.2」に変更
- offsetを「0」から「1.01」に変更
offsetの値は干渉状態になると一括展開できなくなるので0.01の隙間を空けました。
同様に、残りの3ヶ所も同じ形状を作成しておきます。
なお、Bend001で上下や左右対称のエッジを選択してフランジを作ろうとすると、gapが反転するので、新たにBend002を作り、gap1の値を変更します。(対角方向のエッジであればBend001で作れます)
板金モデルの追加工
ワークベンチをPart Designに切替えて、ポケットで穴を空けます。
モデリングの方法がよくわからない!という方は、モデリングの方法をこちらの記事にまとめているので参考にしてください。
板金モデルの展開
解説のため本編から逸れますが、穴の空いたエッジにフランジを作成すると、フランジの両端が切り欠き「0」で作成されます。
これを修正するためには、プロパティに表示された「gap1」と「gap2」、「reliefd」(曲げ逃げ深さ)、「reliefw」(曲げ逃げ幅)の値を変更します。
これらの値は金型やレーザーなどの加工方法によって変わるので、利用するメーカーに確認してください。
1つの曲げコマンドを展開
本編に戻り、穴を空けた裏側の4つのエッジに、デフォルト値のままのフランジを作成します。
そして、「Bend003」をクリックして、プロパティに表示された「unfold」(展開する)の値を「false」から「true」に変更します。
すると、フランジが展開されて、隣接するフランジ同士が干渉した状態になります。
そこで、Bend003のプロパティの値を変更していきます。
- gap1を「0」から「2」に変更
- gap2を「0」から「2」に変更
- radiusを「1」から「0.2」に変更
- Auto Miterを「true」から「false」に変更
- miterangle1(フランジの面取り角度)を「0」から「45」に変更
- miterangle2(フランジの面取り角度)を「0」から「45」に変更
- reliefwを「0.8」から「2」に変更
すると、干渉が無くなるので、「unfold」の値を「true」から「false」に戻します。
フランジが作成された板金モデルの角部を拡大すると、細かい切り欠き形状が作成されているので、ワークベンチをPart Designに切替えて、ポケットで穴を整えておきます。
そして両サイドにフランジを追加すればモデリング完成です。
曲げコマンドの設定項目まとめ
- Bend Type(曲げ位置)
- angle(曲げ角度)
- gap1、gap2(曲げとの隙間)
- invert(曲げの方向を反転)
- length(フランジ長さ)
- radius(内側の曲げ半径)
- thickness(板厚)
- Auto Miter(角の継ぎ目)
- miterangle1、miterangle2(Auto Miterをfalseにすると、フランジの面取り角度を指定した値にできる)
- offset(Bend TypeをOffsetにしたとき、指定した値にできる)
- unfold(展開する)
- reliefd(曲げ逃げ深さ)
- reliefw(曲げ逃げ幅)
曲げコマンドの一括展開
板金モデルの平面部を選択してから、ツールバーの「Unfold」アイコンをクリックすると、コンボビューに「Unfold sheet metal object」が表示されます。
その中から「Generate projection sketch」のチェックボックスにチェックを入れます。
次に「OK」をクリックすると、コンボビューの中に「Unfold」と「Unfold_Sketch」が追加され、3Dビューにはモデリングした板金モデルと、展開モデルが重なった状態で表示されます。
残念ながらスケッチがズレているので、スケッチを展開モデルに合わせていきます。
まず、3Dビューの画面が見辛いので、コンボビューの「Body」をクリックして、スペースキーを押して、モデリングした板金モデルを非表示にします。
(再度、スペースキーを押せば、モデリングした板金モデルを表示できます。)
次に、コンボビューの「Unfold_Sketch」をクリックして、プロパティに表示された「Placement」の値をクリックすると、値の末尾に「…」が現れるのでクリックします。
すると、コンボビューに「配置」が表示されるので、下記の内容に変更します。
- プルダウンメニューから「オイラー角」を選択
- ピッチ(Y軸まわり)」に「90°」を入力
- ロール(X軸まわり)」に「90°」を入力
展開モデルとスケッチが一致したことを確認したら「OK」をクリックします。
まとめ|FreeCAD 板金|曲げと展開の作り方を初心者向けに解説
この記事では、Sheet Metalワークベンチの使い方について解説してきました。
ここでSheet MetalワークベンチV0.3.14のできないことをまとめておきます。
複雑な形状の板金モデルを作る場合には、上記に注意して、作業効率を上げるためにも、Sheet Metalワークベンチを活用してみてください。
また、作成した板金モデルから図面を作る場合には、TechDrawワークベンチを使います。
板金を習得したら
板金を習得したら、下記のリンクから学びたい内容の記事に進んでください。
おすすめは「図面」や「アセンブリ」、「FEM」です。