スケッチってどうやって使うの?どんな機能があるの?と疑問を持っていませんか?
FreeCADで3Dモデルを作成する場合、基本的にSketcherワークベンチを使います。
スケッチには作図コマンドだけでなく、幾何拘束コマンドや寸法拘束コマンド、完全定義を上手く使うことで、質の高い形状を作ることができるようになります。
そこでこの記事は、Sketcherワークベンチの使い方について、筆者が自分の力で調べてできるようになったことを整理したので、参考にしてください。
この記事でわかること。
Sketcherワークベンチの使い方
- 作図コマンド
- 完全定義と未定義
- 幾何拘束コマンド
- 寸法拘束コマンド
スケッチの書き方を習得したい方は、是非ともこの記事を読んであなたの「ものづくり」に役立ててください。
スケッチとは
3Dモデルを作成するための基となる輪郭線のことで、Sketcherワークベンチを使います。
作図するにあたって、作図コマンド、幾何拘束コマンド、寸法拘束コマンドだけでなく、完全定義や未定義なども知っておく必要があります。
Sketcherワークベンチの画面説明
画面はツールバーとコンボビュー、3Dビュー、ステータスバーから構成されています。

ツールバー
新規作成や、保存、作業の取り消し、取消しのやり直し、全てにフィットなど、よく使うコマンドが表示されています。
作図コマンドや幾何拘束コマンド、寸法拘束コマンドは特に使用頻度が高いので、自分の使いやすい位置に配置しておきましょう。

コンボビュー
コンボビューにはグリッドや、拘束、線や円弧などの要素が表示されます。
ファイルを閉じようとして、コンボビューの右上の×マークをクリックしてしまうと、コンボビューが閉じてしまいます。
再表示させるためには、メニューバーの「表示」→「パネル」から表示される「コンボビュー」をクリックします。
3Dビュー
3Dビューはスケッチや3Dモデル、アセンブリ、図面を表示させる領域です。
ファイルを閉じたい場合は、3Dビューとステータスバーの境界辺りにタブがあるので、タブの×マークをクリックします。
ステータスバー
ステータスバーにはカーソルを置いたコマンドの説明が表示されます。
モデリングの流れ
最初にワークベンチをPart Designにします。
- 「新規」アイコンをクリック
- 「ボディーを作成」をクリック
- 「スケッチを作成」をクリック
- 平面を選択して「OK」をクリック(Sketcherワークベンチに切替ります)
- スケッチの作成
- スケッチの輪郭線から3Dモデルを作成

「平面を選択」では、用途に合った平面を選択してOKをクリックします。
- 平面で作図したい場合は「XY_Plane(ベース平面)」
- 正面で作図したい場合は「XZ_Plane(ベース平面)」
- 右側面で作図したい場合は「YZ_Plane(ベース平面)」
では、スケッチの作成について解説していきます。
作図コマンド
3Dモデルの基となる輪郭線はスケッチに作成します。
その輪郭線の1つ1つは作図コマンドを使って描いていきます。
当サイト表記で、点、直線、円弧、円、円錐曲線、B-スプライン、ポリライン、長方形、正多角形、長円、フィレット、トリム、延長、抽出、別のスケッチへコピー、構築モードなどがあります。

直線の作成方法
- ツールバーの直線アイコンを選択(カーソルの表示が変化します)
- 開始位置でクリック
- カーソルを移動(カーソルを移動させた方向へ直線が表示されます)
- 終了位置でクリック(直線が引けます)
- 端点に一致した直線は、カーソルの十字を移動して端点が黄色になると引ける

直線を1本引くと連続して引けないため、次に紹介するポリラインの方が扱い易いです。
ポリラインの作成方法(連続する線)
- ツールバーのポリラインアイコンを選択 (カーソルの表示が変化します)
- 開始位置でクリック
- カーソルを移動 (カーソルを移動させた方向へ直線が表示されます)
- 直線を折りたいところでクリック(直線が引けます)
- カーソル移動とクリックを繰り返すことで連続線が引ける
- 閉じた輪郭線は、カーソルの十字を移動して開始点が黄色になると引ける

ポリラインの挙動の切替え
ポリラインは手順4の後に、キーボードのMキーを押すと、表示される線が変化します。
コマンドを切替えなくても、垂直な線や正接円などを続けて引くことができます。
- 1回押すと、作成した直線に対して垂直な線が引けるように変わります。
- 2回押すと、作成した直線に対してマウスを進行方向に向ければ同一線上の直線が、反対方向ならMキー操作なしのポリラインに変わります。
- 3回押すと、正接円に変わります。
- 4回押すと、作成した直線の進行方向に対し左側に垂直な円弧に変わります。
- 5回押すと、作成した直線の進行方向に対し右側に垂直な円弧に変わります。
- 6回押すと、元のポリラインに戻ります。

コマンドのキャンセル
ポリラインで線を引くと、左クリックで終了できないため、以下の方法で対応しましょう。
- スケッチの輪郭線を閉じる。(線を複数引いた後に、カーソルの十字を開始位置に合わせてクリック)
- 右クリック または Escキーを押す
上記の方法で作成中のコマンドをキャンセルして、コマンドの選択状態に戻ります。
スケッチを修正するためにはコマンド選択状態を終了させる必要があるため、以下の方法で対応しましょう。
- 右クリック または Escキーを押す
コマンドを終了させるとマウスポインタが矢印に戻ります。

その他の作図コマンド
- 点 3Dビューの必要なところでクリックする
- 円弧(中心点と端点) 中心点にしたい位置でクリックして、始点と終点をクリックする
- 円弧(端点と円周上の点から作成) 始点と終点をクリックして、3回目のクリックで円弧の大きさを決める
- 円(中心点と周上の点から円を作成) 中心点にしたい位置でクリックして、2回目のクリックで円の大きさを決める
- 円(円上の3点) 2点をクリックして、3回目のクリックで円の大きさを決める
- 円錐曲線(中心、長半径、点を指定して楕円を作成)
- 円錐曲線(近点、遠点、短半径を指定して楕円を作成)
- 円錐曲線(中心、長半径、端点を指定して楕円の円弧を作成)
- 円錐曲線(中心、長半径、端点からなる双曲線の円弧)
- 円錐曲線(焦点、頂点、端点を指定して放物線の円弧を作成)
- B-スプライン(制御点によるB-スプライン)
- B-スプライン(制御点による周期的なB-スプライン)
- 長方形 長方形の対角となる2点をクリックする
- 正多角形 正多角形の外接円の中心点にしたい位置でクリックして、2回目のクリックで正多角形の大きさを決める
- 長円形 半円の中心点をクリックして、2回目のクリックで短手方向と長手方向の大きさを決める
- フィレット 2つの交差する線(開いている、閉じているを問わない)を選択すると角を丸めることができる
- トリム クリックした一番近い交点までの線を削除できる(交差する線で使えるため、単独の線を消したり、延長の機能はない)
- 延長 線分や円弧の線をクリックして、移動したい位置でクリックする(クリックした位置で延長あるいは短縮できる)
- 分割 エッジを指定した位置で2つに分割できる
- 外部ジオメトリー 3Dモデルのエッジや他のスケッチの線や点を、作成中のスケッチに投影できる
- カーボンコピー 他のスケッチで作成した輪郭線を、作成中のスケッチにコピーできる
- オフセットができない(コマンドが無い)
- 面取りができない(コマンドが無い)
輪郭線の形状を変更
拘束されていない端点や線分をドラッグすると、形状を変更できます。

輪郭線の削除
- 点や線分をクリックしてDeleteキーを押す
- 点や線分などCtrlキーを押しながら複数クリックしてDeleteキーを押す(一括削除)
- ドラッグ&ドロップによるボックス選択で選択された要素についてDeleteキーを押す
ボックス選択では、ボックスの作成方向によって選択範囲が異なります。
- 左→右は、ボックスの範囲に点や線分などの始点から終点までのすべてが収まった場合のみ選択されます
- 右→左は、ボックスの範囲に線分の一部分でも含まれた場合に選択されます

エラーになるスケッチ
以下の内容に該当すると、3Dモデル作成時にエラーが発生します。
- 輪郭線が開いている
- 輪郭線が交差している
- 輪郭線が独立して複数ある(3Dモデルが分割されてしまうスケッチ)
- 輪郭線の中に輪郭線が繰り返し複数ある(3Dモデルが分割されてしまうスケッチ)
- 余分な線がある(マウスの操作ミスで作成してしまった線や、重なった線)
重なった線の上でクリックすると、片方の線のみ選択できるため、Deleteキーを押しても消えなかった線が重なった線です。
なお、ボックス選択はすべて選択してしまうため、地道にチェックするしかありません。
未定義の輪郭線は同じ長さの重なった線が存在しても、見た目で区別できません。

完全定義と未定義
スケッチには完全定義と未定義の2つの状態があります。
完全定義
- 輪郭線の配置とサイズが指定されていて、点や線分をドラッグしても移動しない状態
- 完全定義の線分の色は緑で表示される
- エラーが発生した場合、点および線分の色はオレンジに変わる(円のみを除く)
未定義
- 点や線分をドラッグすると移動する状態
- 線分のサイズを指定しても原点からの位置関係を指定していないと未定義となる
- 未定義の線分の色は白で表示される
原点とは、モデルの基準となる座標(x,y,z)=(0,0,0)を示す点のことです。
輪郭線を描くときは基準となる原点から、どの位置にあるのか指示すると共に、点や線分の色が緑(完全定義)の状態にします。

円のみの場合、同じサイズの円を中心点で一致拘束しても、線の色は変わりませんが、線が重なっているため3Dモデル化することはできません。

構築モード(作図用の補助線)
構築モードの線の色は、完全定義のときは紫で、未定義のときは青で表示されます。
輪郭線の補助の役割をするため、3Dモデル化するときに輪郭線として認識されません。
用途は穴と穴の中心線だったり、対称拘束で形状を作るときの中心線、構想線など、輪郭線として認識して欲しくない場合に使います。
構築モードの線の作成方法
構築モードのアイコンを選択すると、作図コマンドのアイコンの色が青に変わります。
この状態で引いた線は構築モードの線となります。(コマンドの使い方は変わりません)
もう一度、構築モードのアイコンを選択すると元に戻ります。
輪郭線と構築モードの線の変換方法
輪郭線から構築モードの線に、構築モードの線から輪郭線へ変換できます。
線を選択してから構築モードのアイコンをクリックすると、輪郭線が構築モードの線に、構築モードの線が輪郭線に切り替わります。

幾何拘束コマンドと寸法拘束コマンド
幾何拘束は形状を規制する拘束のことです。
当サイト表記で、一致/同心円、線上点/交点、鉛直、水平、平行、垂直、正接/同一線上、等値、対称/中点、ブロックなどがあります。
同一円弧については単体でコマンドが存在しないため、2つのコマンドで対応します。
寸法拘束は形状の寸法を規制する拘束のことです。
ロック、水平距離、鉛直距離、節点距離、半径/直径、角度などがあります。

幾何拘束の設定方法
幾何拘束コマンドを選択して、点や線分に幾何拘束を指定します(点や線分を先に選択しても設定できます)。
- 一致 2つの端点あるいは点が一致される
- 線上点 点は線あるいは円弧の上、2直線の交点に配置される
- 鉛直 線は鉛直になり、点は鉛直に整列される
- 水平 線は水平になり、点は水平に整列される

- 平行 2直線は互いに平行に指定される
- 垂直 2直線は互いに垂直に指定される
- 正接 直線と円あるいは円と円は正接に、直線と直線は同一線上に指定される
- 等値 線の長さあるいは半径値が等しくなるように指定される
- 対称 輪郭線は中心線から等しい距離で、中心線に対して垂直な線上に指定される

- ブロック 未定義の輪郭線が、そのままの状態で固定される。(形状変更するときにブロックの固定があるとエラーが発生しやすいため、基本的に使用しない)
- 自動拘束 鉛直方向や水平方向へ近づく線を引くと、自動で鉛直拘束や水平拘束が適用される

対称拘束は「2つの点と1つの直線」か「3つの点」、「1つの点と1つの直線」しか選べません。
「2つの点と1つの直線」で拘束した場合、線のサイズを規制できません。
線のサイズを規制するためには別途、等値拘束を追加する必要があります。
(他のCADでは中心線と2つの直線あるいは円を指定して、対称拘束できますがFreeCADではできません)
「1つの点と1つの直線」で拘束した場合、直線上の中点と同じ結果となります。
同一線上については幾何拘束の線上点と平行の2つの組合せで対応できます。
同一円弧についても幾何拘束の一致と等値の2つの組合せで対応できます。
幾何拘束の削除
点や線分に設定されている幾何拘束は、点や線分の隣の幾何拘束マークと、コンボビューの幾何拘束リスト(Constraints=拘束)に表示されています。
それぞれ対になっているため、片方をクリックすると両方選択されます。
この状態でDeleteキーを押すと削除できます。
形状が複雑になると幾何拘束の数も増えるため、コンボビューの幾何拘束リストから探すのが困難になります。
そのときは点や線分の隣の幾何拘束マークを選択して削除しましょう。
尚、幾何拘束リストのチェックを外すと、画面上の幾何拘束マークを非表示にすることもできます。

寸法拘束の設定方法
寸法拘束コマンドを選択して、点や線分に寸法拘束を指定します(点や線分を先に選択しても拘束できます)。
- ロック 1つの点をクリックすると原点からの水平距離と鉛直距離を追加し、2つの点をクリックすると2点間の水平距離と鉛直距離を追加する(2点を選んでからコマンドを実行)
- 水平距離 両端の点あるいは、線分をクリックすると水平方向の寸法を追加する
- 鉛直距離 両端の点あるいは、線分をクリックすると鉛直方向の寸法を追加する
- 節点距離 両端の点あるいは、線分をクリックすると2点間の直線寸法を追加する
- 半径/直径 半径あるいは、直径の寸法を追加する

- 角度 2直線の角度寸法を追加する
- 拘束の抑制/抑制解除 コンボビューの幾何拘束リストあるいは、点や線分の隣の幾何拘束(抑制された幾何拘束)マークを選択して、「拘束の抑制/抑制解除」アイコンをクリックすると抑制(抑制解除)できる。「幾何拘束の削除」の項目で行った幾何拘束リストのチェックを外すとは別物です。

- 寸法拘束できる要素は、「点と点」「点と線分」「線分」となり、「線分と線分」は拘束できない。
参照モード(参照寸法)
参照モードのアイコンを選択すると、寸法拘束コマンドのアイコンが青色に変わります。
この状態で引いた寸法は青色で表示され、寸法による拘束が抑制(数値のみ表示)されます。
既に引いた寸法も寸法をクリックしてから、参照モードのアイコンを選択すると、青色の寸法に切替えることができます。
用途は重複寸法によるエラーが発生したときに、その寸法をDeleteキーで消す以外でエラーを解消できます。
作成した青色の寸法は再びその寸法をクリックしてから、参照モードのアイコンを選択すると、元の赤色の寸法に切替えることができます。
参照モードのコマンドの解除は、再び参照モードのアイコンを選択すると元に戻ります。
グリッド
原点を基準に表示されたマス目のことで、グリッドの交点に合わせて線を引くことができます。
グリッドの表示方法は、コンボビューの「Edit controls」の「グリッドの表示」のチェックを入れます。
更に「グリッドにスナップ」のチェックも入れると、開始点以外のグリッド付近でクリックした点がグリッドに吸着するようになります。
グリッドサイズはデフォルトで10.00mmなので、好みのサイズに調整しましょう。
グリッドを使う注意点として、精密な輪郭線を引く場合、グリッドが邪魔してしまうこともあるため、必要に応じて切替えましょう。

スケッチの閉じ方
スケッチを閉じたい場合は、コンボビューの「閉じる」をクリックします。
なお、スケッチの輪郭線を編集したい場合は、コンボビューのツリーに追加された「Sketch」をダブルクリックします。
まとめ|FreeCAD スケッチ|作図と幾何拘束と寸法拘束を初心者向けに解説
ここでFreeCAD 0.19のできないことをまとめておきます。
- オフセットができない(コマンドが無い)
- 面取りができない(コマンドが無い)
- 寸法拘束できる要素は、「点と点」「点と線分」「線分」となり、「線分と線分」は拘束できない。
スケッチを習得したら
スケッチを習得したら、下記の記事より学びたい内容の記事に進んでください。
おすすめは「Part Design」や「モデリングコマンド」、「板金」です。